サザンクロス
空席目立つ地下鉄の片隅に
寄りかかって見るのは
吸い込まれそうな闇。
乗り込んで来る老人の
窪んだ眼球が辺りを見回し
皺に隠れる様に閉じられた。
僕は、ひたすら自分の
両腕を鷲掴み、冷たい
コンクリート壁を凝視する。
充満する地下独特の空気感が
現代の檻の様で。
乾いた唇に、君の、潤った愛が
欲しくなって、白昼だと言うのに
昨日抱いた君を思い出す。
真っ直ぐ貫かれる視線に振り向けば
ほら、枯れ枝の様な指で示される
深い闇の、更に、奥の方を。
信じることは馬鹿馬鹿しいとアタシも思う。
裏切りは必然で、
それはたとえ意図的なものじゃなくても
失う悲しみを知っているから
根本的に揺らがない波となって
不安は増殖される。
それでも。
求めることを
望むことを
やめることができないのは
アタシたちがまだ
生きているから。
写真をみて、
絵画をみて、
涙が出るのは
まだ
感じる感覚を失っていないから。
by maco516 | 2011-11-02 10:03 | 日々